苦難をやわらげる、俺のオアシスはガールズバーだ
H.N/賢一
俺はビルメンテナンスサービスの仕事に就いているアラサーの男。文系出身の俺は、今までは事務的な仕事ばかりしていた。でもデジタルの進化や業績不振で、社内人事に再構築が起きる。人員削減で、おっさん達と共に肩叩きをくらっての転職だ。
新しい職場は20代でも経験を積んだ者や、40代以降はベテランの資格者ばかり。つまり仕事を終えても家で勉強が続き、ベテランからは説教、20代からは知識と経験不足から冷ややかな目で見られることも多々ある。
当然仕事を続けて生活を安定させたいが、やっぱりストレスだけが心配の種。立て続けにこれまでの友人が結婚したため、飲み友達が居ないのが懸念材料だった。1人で居酒屋は人目が辛いし、BARはリア充カップルが居座っているときつい。
だけど今はネットの時代。アラサーソロにおすすめのスポットはどこが候補か、検索しているとすぐにピンと来るものがあった。それは、キャバクラのような華々しさとドス黒さを感じない、ガールズバーだ。1時間で5,000~6,000円くらいが相場と思っていたけど、推測より安かったのも敷居の低さを感じる。
初めて訪問する当日は、「今日は仕事終わりにガールズバーがある」と思うと仕事へのモチベーションも高くなっていたので、やはり俺はオンオフの切り替えさえ上手くできれば良かったんだ。
期待と不安が入り混じった気持ちで入ったところ「あ!いらっしゃいませ」と、ニッコニコの笑顔で女性たちが挨拶をしてくれた。20代前半しか居ないような店ではなく、20代中盤から後半もいそうなガールズバーなのも選ぶ際に重視した俺。どうやら正解だったようで、地雷メイクギャルなどはいない。
なおカウンター内にいるのは2名で、うち1人のAちゃんが俺についてくれた。ビールが好きなのを伝えると「平日で今はお客さん少ないから、沢山しゃべれますね」と、笑顔を見せながら対応してくれる。
想定していたことで、その通りだったのはやっぱりガールズバーへ来店した理由を聞かれたことだな。俺は正直に板挟み状態の今の環境を話したが「私は勉強が苦手で、接客力を上げる努力くらいしかできないから凄いと思うな」と、称賛してくれた。
俺は「ああ……。そういえば褒められるなんてこと、ここ最近ずっとなかったからなんか嬉しいなあ」と返す。
するとまた「お兄さん、きっと癒しが足りていなかったのかも?」と言われ、その通りじゃないかと実感。うるさくも静かでもない居心地の良さを覚え「もっと早くガールズバーに来れば良かったよ」と、包み隠さず告げた。
話は一切途切れずトークが続く中、新規客の2人組が入ってきた。そこで一旦Aちゃんは他の女の子とともに接客を始め、俺から離れる。ほろ酔い状態と心の隙間を埋めてもらえているので、1人飲みが若干続くくらいは何の問題もない。
当然放置されていると思ったわけではないが、少しの間目線を正面から他の客の方面へ向けてみた。どこかで飲んで来たようで、2人の男のうち、1人がややうるさい。
女の子がなだめていると、ああ、ガールズバーの女の子も仕事がかなり大変なのだなと、当事者目線で知ることもできた。
だから、Aちゃんが戻ってきたときに「Aちゃんも飲む?スタッフさん用のドリンク、いいよ」とオーダーをとってあげた。「あー!お兄さんの方から言ってくれるって、嬉しい~」と上機嫌だ。ちなみにドンペリなどの高価なボトルではなく、庶民価格なのでまったく負荷がかかるレベルじゃない。
笑みがこぼれたキュートな彼女から、今度は自身の話題についても語ってくれた。俺がしゃべるほうが多かったので、聞き手に回るのも酒の効果が相まって心地良い。
「元々は居酒屋やアパレルでバイトしてたの」と言う彼女。どうやら、居酒屋はビールジョッキを何本もトレイに乗せることもある重労働、客が多すぎるために大勢の客を相手にしながら泥酔客の相手などあったらしい。前職に比べるとまだガールズバーのほうが大人しいらしく、さっき若干声を荒らげた客はレアというレベルのようだ。
ここまで裏表無く話せるのは酒が入った効果なのだろうか。出会ってたった数十分なのにまるで友達のような、妹と話しているかのような感覚になれた。
ちなみに、女の子はお店に立ったメインの看板であるため、ビジュアルレベルも高いためにルックス重視の男でも十分楽しめるだろう。さらにAちゃんや他の女の子スタッフも、やや露出度が高く肩のラインがセクシーなキャミソールを着用している。目のやり場に困るほどの格好じゃなく、程よい露出度合いなので、ざっくり言うとうっとりとさせられる感じ。
あっという間に時間が来たが、今回は初回の来店だ。かなり満足できたので、月に2回。いや3回か、ほぼ毎週行ってみるのも悪くない、そう思うことができ仕事へのプレッシャーもやわらいだように感じる。