コミュ障はガルバよりキャバの方がいい
H.N/Yu-Ji
前からガールズバーには興味があった。コンカフェと一緒で最近よく話題になるし、会社の同僚連中もちょこちょこ通っているって言ってたし。
俺が住んでる群馬は東京とかに比べるとそこまで飲み屋は多くないんだが、それでもガールズバーはある。他の飲み屋よりもコスパがいい、夜職に染まらない女の子が多いのも悪くない。
ネット検索してみるとこんな感想ばかりだったので、先日会社帰りに持てる勇気を全て振り絞り一人で入店。
繁華街から少しだけ入った、小さな路地裏にあるガールズバー。人通りが少ない通りなので、意外と穴場なのではと踏んでの入店だ。夜の帳が下りて薄暗くなった街に、コンコンと光るガールズバーのネオンサイン。甘い蜜に吸いつくカブトムシのように、スルスルスルっと引き寄せられるように店に入った。
一歩お店に入ると思わず目を丸くしてギョッとしてしまう。「えっ、客俺一人なの、マジで」決して広くない店内、マネージャーと思しき男が拭き掃除をしている。そしてカウンターにはズラリ並んだ女の子が計6人。
「いらっしゃいませ~!」可憐な声が店に響き渡り、俺はそそくさとカウンター席に移動。コミュ症、彼女ナシの俺にとって、痛いくらいに刺さる女の子たちの視線は辛い……。これは地獄かなんかの罰ゲームなのか。
ただし、女の子たちはみんな可愛かった。アイドル級とはいえないが、たぶんみんな20代前半なんだろう、素人臭さはあってもルックスは十分だ。
簡単にこの店のシステムを紹介してもらった。色々グダグダと説明されたが、ようするに1セット(60分)で4000円だそう。
持ち込みとかカラオケ、ダーツを楽しむ場合は別途料金が加算されるようだが、さすがにこの店で一人カラオケはない。1セットのみで帰る決心をし、とりあえずワインを注文。一時はワインソムリエを目指していた時期もあるくらいなので、ワインにはちょっとうるさいんだ。
独りぼっちの店内、女の子が集団でこっちをチラチラ見ながら噂話。そんな視線を感じながら、嗅覚をクンスカ駆使してもワインの風味は感じられず、まるでぶどうジュースのよう。
「こういうお店は初めてですか~?」当たり障りのないぎこちない会話を投げてくるが、この雰囲気に圧倒され上手く言葉が出ない。コクリとうなずき、マズいワインをお代わりするのが精いっぱいだった。「あの客ヤバそう」たぶんそんな風に思われたに違いない。
女の子たちは暇を持て余し、携帯を弄ったり新人スタッフを研修したりしているが、もうキャストと客の距離感が分からない!このままでは余計居づらくなると思い声かけしようと思ったら、別のリーマングループが来店。
内心ほっとしたのもつかの間、隣のとなりでぎゃあぎゃあ騒がれ、女の子もなぜかそちらで盛大に盛り上がる。これは……、やっぱりHell。
状況を察知した女の子が、「私もお酒頂いていいですか~」とおねだりしてきたので、勿論OK。いくらするかもわからない随分立派なカクテルを注文。
「学生さん?このお店は長いの?」もう何でもいいやとやけくそになり、適当に会話を振ると、「この店は単に学生コンセプトってだけですよ!」とか意味不明な返しに困惑。空間がよじれるような、そんな気分だ。スマホを見るとまだ40分、あと20分もあるのか。
きっとキャバクラに行けば、お触りできたり女の子もヘルプが付いて、色々空気を読んで話を振ってくれるんだろうな。数週間前、上司に無理やり連れていかれたキャバクラに思いを馳せる。
キャバクラはキモイおっさんばかりだからか、キャバ嬢は変態の交わし方も熟知しているし、コミュ症でも無言空間にならずにワイワイできたんだけど……。業種が違うのは分かっているけど、個人的にガールズバーは合わなかったよ。興味があっても楽しめるとは限らないってこと。
まあ、直感が外れた、ようするにお店選びに失敗したってことなんだけど、暇な店を選ぶとダメだね。オマケにキャストのドリンク代が意外と高いし、サービス料も15%だったかな追加されたし。
コスパよく飲める。確かにキャバクラやラウンジに比べるとシステム料金は抑えられているのかもしれないけど、実際その場を楽しめたのかといえばもちろんNO。まだ友達を誘った方がダーツとかも楽しめた。
もっと下調べをしておけば、きっとマイワールドに合致する店で心地よく酔えたのかもしれない。しょうがないね、今回は初ガールズバーだったってこともあり、勉強代として諦めてそそくさと帰ったよ。
「まだお時間が残っていますよ!私、もう一杯飲みたいな!」って言われたけど、体調悪いからって断ったら、あからさまに嫌な顔をされてしまった。俺ももう少し気の利いたセリフが言える男にならないとな。
ということでコミュ症男たちよ、ガールズバーの一人飲みは要注意だ。雰囲気に飲まれがちな奴、異性慣れしていない奴は複数での来店かキャバクラをおすすめするぞ!