カウンセラーのようなお姉さんと束の間を楽しんだ
H.N/マカ・オーレ
学生時代、家庭環境がズタズタだった僕は学業を完全におろそかにしていました。飲んだくれの親父はアル中、母は憔悴していて、家族3人どうにか暮らしているだけというありさま。家に帰っても勉強なんてとても手につかず、僕は中学卒業後にすぐさま鳶職として働いていました。
足場が高い現場での作業、そこで指揮する社長も言葉遣いが荒く萎縮してしまいます。体格だけは細マッチョな僕ですが性格は体育会系ではありません。がむしゃらに働いて4年、怪我をして静養していると、戻って来るのを待つほどの人材じゃないと早々にクビ宣告を受けました。
なお、高校も行っていないので、僕には学生時代からの友人もいません。なので16歳から20歳までの間、ほとんど人と遊ぶことすらしていませんでした。ということはお金も貯まるわけですが、肉体労働の鳶は収入が悪くないので、長期で休業しても問題ないくらいです。
二十歳前からタバコと酒を始めたのですが、休業中も気にせず続けました。夕方に起き夜はBARに行くことが増えたなという感じです。
マスター1人でやりくりしていて、かつバーテンも兼任。程よい距離感であまり話しかけてこず、他にも1人客が多いので居心地のいい場所になっています。
ただ、たまにリア充のカップルが来る時は、テンションも下降気味。そんな時は早々に店を後にしますが、マスターから「気にせず居ればいいのに」と言われたこともありました。
いつものように平日の水曜、行きつけのBARへ行くとお客が「ガールズバーもいいけどたまには男同士で飲むのも良いな」と会話しているのが聞こえました。ガールズバー?何だろうと聞き耳を立てていると、キャバクラよりライトな立ち位置の特殊飲食店のようです。
興味を引いたのは、お一人様でも行きやすく、BARそっくりの内装(カウンター席の数など)というところ。歓楽街には幸いガールズバーが数件あったので、行くことを決意し来週を待ちます。
訪れたガールズバーの子たちの年齢層は、まさに僕と同じ世代の20代前半です。「来店ありがとうございます~。今日来たきっかけを聞いても良い?」と語りかけてきたBちゃんは、僕より3つ上の23歳。
ガールズバーというくらいなので、派手なイメージを持っていましたが黒髪ロングの美少女タイプです。1人飲みで普通のBARに行っていて、カップルで埋まる時がきついことを話すと「お一人様も当たり前に来るから、うちなら安心だね」と言ってくれました。
フリードリンク飲み放題で、僕が入った時間は深夜帯の価格より安いミドル帯の料金でした。50分が2,500円で、シングルチャージ料が500円、つまり50分がたったの3,000円です。
「え!?そんなにも安いの?」と言うと「キャバよりよっぽど良いでしょ」と返してきて、ムードも和気あいあいです。
ただ、やはり仕事の話になってしまったのですが、僕にとって凄く励まされる時間でした。鳶職から離れて現在は仕事探しをするか、あるいは中卒がネックなので高卒の資格だけは取るべきかという話題です。
するとBちゃんが「私、大学まで行ったけど今はガールズバーだし、気にすることないよ。でも私は高校、実は通信で卒業したんだ、だからお兄さんも」と、通信制の話になったんですね。
そういえば、通信の考えが視野になかったと考えていると「バイトしながら通信に行って卒業できると、採用率が上がったり仕事の幅が広がったりするはず」と嬉しいアドバイス。もう、瞳に映ったお姉さんがカウンセラーのようにも見えましたね。
そこでガールズドリンクというのをリクエストされたのですが、1杯千円で快く入れてあげます。というか、勉強になったのに、僕から言っておけば良かったというくらい。
店を後にして家に戻るまで、心が充実していたのを実感。通信制で高卒資格を取るためにバイトする生活なんて考えてもいませんでした。Bちゃんのおかげで新しい視野で将来の展望が見据えられました。ガールズバーに行って良かったなと喜びを噛み締めます。
なお、会計の少し前に聞いたのですが、オープンしてからすぐの時間は、もっと料金が安いという説明も受けました。
また僕はいま時間にゆとりがあるので、来週もBちゃんが活躍するガールズバーに行こうと決めています。20時のオープンだとさらに手頃だから、もしかしたら行きつけのBARよりも頻度が多くなってしまうかもしれません。