トーク下手が克服できそうなのはガールズバーのおかげ
H.N/ガイア
一見するとクール、深く知れば知るほどバカ、それが俺の周囲から見られている評価だ。クールだけなら嬉しいが、見た目とのギャップが悲劇なことにマイナス方面に働いている。
野郎ばかりの環境は高校からで、ずっと男社会で生きてきているせいか、女性と話すのが苦手だ。身長は180cmもあるというのに、女性を前にすると緊張も人2倍くらいしてしまう。
まるでアニメに出てきそうなアホキャラでもある俺は、この悩みをどうやって解消するかで苦悩していた。女性経験もたった1人だし、しかも童貞を卒業できたのは、出会い系アプリで知り合ったブサイクな子。
最近流行っているライブ配信で、会話を投げかけ修行をしてみたけど、これは俺が単に文字を打つわけだから意味があまりないと断念。コンパも定期的にあるわけじゃないし、どうせ醜態を晒して職場でバカにされるのがオチだろうな。
だからもう、1人で何とかしてやる!と意気込み、夜職が働いている子のところへ行こうと決意したよ。そして候補で出てきたのが、俺の年齢に合いそうなガールズバー。
調べてみて良かったなと思ったのが、結構俺の近所にお店があるという点かな。そもそも自宅が駅近いので、下手をしたら仕事帰りにすら寄れるかもと興味もどんどん湧いてくる。
ただ汗臭い仕事だから、土日の休み限定で小綺麗にして行くことにした。しかし、コスプレや私服とかいろんな店があるものだと見ていたが、コスの店だと何か緊張しそうな感じ。結果、気を遣わずに過ごせそうな私服のガールズバーということで、早速GO。
ボーイみたいなのから声をかけられ
「うちは可愛い子ばっかりですよーどうですか?」
「いや、今入るところだから」
とボケとツッコミみたいなシーンがあったが、まあそれも良しと案内してもらうことに。入店時間は20時半で、まず驚いたのは料金体系だろうか。
1セットが60分になっているようで、料金は3,000円に税が入る程度につき滅茶苦茶安い。しかも酒が飲み放題、生ビールが飲めるのはあまりに条件が良すぎる。
店内は赤いバーカウンター用のチェアが並び、全20席はあるおしゃれかつ少し広めのお店。20代前半から30代前半に受けの良さそうな空間で、心が落ち着く。
腰を預けて一服しようかと思うと、そこに付いてくれる女キャストさんが来た。24歳で俺より2つ年上のLさんだが、黒髪にシルバーアッシュの色が入った今どきの子で、ルックスはとても良い。
ガールズバー自体が初めてなのでさらに緊張していたが「今日は来てくれてありがとうございます。ゆっくりしていってくださいね」と、見た目は美人インフルエンサーの雰囲気だが、お高くとまっていないのが好印象だ。
聞けば、本当にSNS発信をしていてフォロワーも1万人以上いるらしい。現在はメイクを学び、ネイリストを目指し事業を立ち上げるべきか、あるいは夜の世界で働き続けているかを悩んでいるようだ。
「やりたいことがたくさんあっていいなあ」と俺が言う。
すると「でも、結構中途半端なんだよね」と、意外に不器用な点が似ていることでもまた印象を上げる。
あと、ガールズバーで働いている女の子はセクハラをされるものなのか、客から言い寄られることがあるか俺は気になっていた。
そこで聞いてみたら「ラストまで残ったおじさんが、連絡先を教えてくれってしつこくて…」という意外な悩みも吐露。
俺は「そういう時はカウンターから逃げて、居ないことにしてみるっていうのは?」と言ったら「ありがとう、心配してくれて」と感謝された。
ここまで話下手な俺がコミュニケーション不足を発揮しなかったのは、酒のおかげかもしれない。もちろん「俺はほんと会話がヘタで、今まで何度も失敗してきた」と言ったのだが全然信じてもらえない。
「お酒の力は確かにあるのかもしれないけど、ならどんどんうちに来て修行して、克服しちゃおうよ」と言われた。さらに嬉しかったのは、Lさんが出勤の日を教えてくれたうえに、LINEのIDも教えてくれたことかな。
どうやら筋肉質の男が好みのようで、俺はガツガツしていないから暇な時にやり取りをしたいと言ってくれたのだ。
そして延長はせず2週間後、また彼女のいるガールズバーに遊びに行ったのだが、話しにくい苦手意識がだいぶ薄れていたことに気がついた。その時「だから慣れるって言ったでしょう?」と、まさに姉御肌な彼女。
恋愛本とかを見ずとも、徐々に自信が付いてきたから、お礼もかねて今後も通いまくる約束をした。れでも良いと思ったのは、キャバと比べて圧倒的に安いからかな。
だから安くて貢がなくていいガールズバーは、周囲にもおすすめしたいと心から思えた。