束の間の癒しはガールズバーしかない
H.N/衣・セクス・住
ウエディングプランナーの僕は、新たな門出を迎えて出発するパートナー達をお見送りする側の職種。1年目はまだカップル達を目の当たりにしても、微笑ましいなという祝福の気持ちに満ちあふれていました。けれど、自分が最近振られたこともあり「ちくしょう、見せつけやがって」と歪む傾向が見られたのです。
そんなとき、友達に「お前最近、邪心が芽生えてへんか?」と見事に心の内を見抜かれてしまいました。
とはいっても、純愛をするにも億劫になったのが僕のリアルな心情。そうなると「俺って発散場所があらへんけど、どうしたらええかな?」と僕より遥かにモテる友達に相談をしました。
返答は「ガールズバーが今のお前にはええかも」というアドバイスがあったのです。理由は、キャバクラだと色恋営業が当たり前だから、もう少しゆるやかなところが良いという、確かな助言でした。
幸い観光客も多い京都にはガールズバーがいくつもあったため、探すのには苦労しませんでした。1人で行く客もいるとは聞いていたけど、せっかく友達から指南を受けたので、僕のおごりでついてきてもらうことに。
まずは、僕の家からそうは遠くない、河原町にあるガールズバーを選びました。
そこの女の子たちは18歳から22歳くらいがおよその年齢で、僕たちに付いてくれたお姉ちゃんが自ら「私が最高齢の22歳なんですよ」と言っていたのです。
僕は初めてで右も左も分からなかったので1人1人の男に付きっきりじゃないんだな~、と不思議に思って同席の友達にこっそりカウンター席で聞くと「キャバより安いんやから当然やろがい」と、ここでも僕はまたお勉強。
何というか、接客というよりもコンパのようで、和気あいあいとしているのが楽しい。付け加えるなら、コンパで皆が可愛くてノリ良く接してくれるというイメージでしょうか。
また、1店目のガールズバーにはダーツがあって、飲むカウンター席の裏側にあるから全然ほかの客が邪魔にならないところもグッドでした。
失恋の傷を吹き飛ばすために「この野郎!」とダーツに夢中になっていると僕たちに付いたガールズバーのお姉ちゃんたちも「一緒にしましょうよ?」と、もう面白くてたまりません。
2店目は調子づいた僕が、翌週に友達を再度誘い「お前、味しめたんとちゃうか」と苦笑い状態。今度は友達のおごりで、木屋町にあるガールズバーへ現地調査に行くことに。
平均年齢は20歳から24歳くらいで、僕たち2人に1人のお姉ちゃんが長時間付いてくれる感じでこれまた外れなしの名店です。
前回のダーツのあるガールズバーと違って、カラオケ付きというのが気に入りました。
客は1人が連続で入れることもなく、たまに誰かが歌う感じで聞くに徹する人たちも居たのが心地良い印象です。
僕と長く話してくれた、奨学金返済のために勤務している23歳のDちゃんが特にポイント高かったですね。単に夜の商売が好きだからというわけじゃなく、真面目な目的のもとやっていたのだなと感動を覚えたほどです。
そして、歌をリクエストしてくれたので定番のバラードを恥ずかしながら披露しました。歌唱力は元より色んな人たちから褒められていたので「歌やっちゃうま~い!」と絶賛してくれてテンションもアップ。
そんな中、僕はずいぶんと女の子とカラオケに行っていなかったので女子の歌も聞きたくなっていました。そこでDちゃんに、僕の好きな歌姫の曲をリクエスト。有名なプロデューサーが提供した、伝説のウエディングソングです。
職場の式場でしょっちゅう耳にしていたので、僕がタイプの子に歌ってもらいたいという、いわば冒頭で言った邪念の浄化でございます。
合間にビールジョッキ2杯目となり、我を忘れていた僕は「セレブレイトー!」と合わせてしまい、後日談ですが友人いわく他の客が苦笑いしていたようです。
もう楽しければ全て良いとご機嫌で、歌ってくれた彼女にはドリンクを2杯もサービスしちゃいました。でもドリンク2杯で1,000円だったので、キャバクラよりだいぶん安いのだなあと、びっくりしました。
しかも、1セットの時間も長いし90分とかあって高コスパじゃないか!と、つまり理想の発散場と認知。
店を後にしたとき「お前にはもう、俺から教えることは何もない」と、免許皆伝の通達を受けました。それからまさか、僕の方から積極的に誘うようになるなんて……。
ただ、本当に30代の女性が全然居ないので、僕がアラサーになったとき、ガールズバーには果たして行ってもいいのだろうかという、先行きにやや不安も覚えました。
けど、先のことは誰にもわからないからまあいいかと、ガールズバーきっかけにポジティブ思考にもなれたのです。