先入観を持たずに行ってみた和風ガールズバー
H.N/祐介
美容師の専門学校に通っていた僕は、入学して半年で退学。華やかで楽しい世界だろう、という安易な考えで入ったけれど、情熱が続かなかった結果です。専門学校を辞めてからは、飲食店のバイトから社員へ。
ですが飲食の厳しさをなめていて、長続きせずにやっぱりバイトを転々としていました。今は自動車部品製造の社員ですが、なかなかの重労働。なので、休みの日は寝てばかりで時間が過ぎていきます。
けど、休日に何もしなければどんどんお金は貯まっていくので、良くも悪くも仕事が安定したのは良かったです。
なお、美容師の専門学校時代の友人は、現役の美容師になっているため疎遠になりました。
そんな卑屈でひがみっぽい僕の性格は、やっぱり致命的でしょうね。となると友人もいない、交わるのはSNSでの薄い関係ばかり。
何か変化をもたらしたい、自分を変えなくてはと思った僕は、インドア度数を下げることにしました。
なお、ポンコツの軽自動車をもっていますが、休みの日は自然の景観を見る、街散策をするなどとことん外出をするようにしました。
ある日、本屋に立ち寄ったところ、自己啓発の本が目に留まりました。
コミュニケーション力を磨くというものでしたが、本を読み学ぶなど、そんなに学問のような捉え方をしなくてはならないのかと、否定的に本を閉じる始末。
笑って遊んで楽しくコミュ力を上げられたら良いのに、寂しさも解消できれば良いのにと、人ともっと接したいと考えるようになりました。
ただし、孤独感は男とつるんでも解決はできない、それは他の人もそうでしょう。彼女もいないので、やはり女の子と仲良くなりたい、そう考えコミュニティなるものを探すように。
ネットでは、以前のSNS漬けの僕と変わりがないのでやはりリアルで。合コンの場、街コンの場は恋人のみを目的にするから候補からは除外です。キャバクラなどは敷居が高く、ギラギラした感じで逆に怖い感じがしました。
ただ類似するものにガールズバーがあり、カジュアルに楽しめるのでコミュ力も問わないとのことです。さらに値段も安めと聞いたため、早速ガールズバーを探し始めました。
すごく派手そうなパリピ風の店、和服姿のお店などが目に入りましたが、僕は和風の店舗に惹かれたので行ってみることに。
めちゃくちゃ狭いBARという想像もしていましたが、席は20以上ある感じ。高級感というよりも、やや祭を思い出す雰囲気があって、僕にとってはこっちの方が好きかな。
金曜の22時だったのですが、お客は6割ほど入っている形でしばし待っていたところ、女の子が来ました。カウンターに入っている子たちを含め、20代前半から中盤が女の子の年齢層に見えます。
なお、すらっとしたスレンダーの子のLさん(21歳)が僕についてくれましたが、スリットが入っていて眩い……。
「綺麗で緊張しますよ」と僕が言うと、「褒めてくれてありがとうございます。今日は飲んでたくさん話しましょう」と良い接客です。
カクテルやハイボールが飲み放題で、60分が3,000円くらいだった記憶ですが、すごく安い。
和風コスプレなんて真新しすぎるので「目の保養になります(笑)」と続けて僕が話すと「敬語は使わなくて大丈夫」という言葉が。ウジウジしがちな僕の性格をすぐに見透かされた気がしましたが、やっぱり接客はプロと言わざるを得ません。
あと、正直にLさんへ「コミュ障を問題視している」、「トーク下手過ぎる問題を解消したい」ことも告げましたが、上手に合わせてくれてみっちりとトークに付き合ってくれます。
少し余裕が出てきたのでLさんのこともいろいろ聞きましたが、どうやら夜の仕事が好きなのでガールズバーを続け、ゆくゆくは今の彼氏と結婚してスナックに移る気なのだとか。でも、はっきりと彼氏がいることを言ってくれたのは好印象です。
だって世の中、いてもいないと嘘をつく人が多いものだから、口説く目的がない僕はこんな形でまったく構いません。ちなみに後半はカラオケも打診されましたが、さすがにお一人来店だったため、そこまでの度胸はありませんでした。
ただ、次回来たときは歌いたい曲を考え、酒の力を借りつつも歌ってみようかなと考えています。少しだけ鬱屈とした気持ちが晴れ、帰りのタクシーの車内で「お客様、今日はご機嫌ですね」と運転手さんに言ってもらいました。ガールズバーのおかげだと思うので、僕はこれからも通ってみようと思います。