歌舞伎町のガールズバーへひとりで突入
H.N/レット
大学を出たものの、努力不足で希望するホワイト会社には入れなかった。結局ブラックとは言わないものの、際どいレベルのハードな会社に入った俺は、言われるがまま業務をこなす日々を送り続けた。
仕事は営業だが、まるで馬車馬のように新規開拓をこなし、会社へ戻るとロボットがごとく作業に次ぐ作業。月に5日くらいしか休みがなく、休みの日は昼まで寝て午後に外食チェーン店に行くのが精一杯。
このまま俺って、一生奴隷のように働き続けて人生終わってしまうのかなと思うと、ストレスの蓄積がもう半端ではない。趣味を見つけようと考えたものの、今の俺に結びつけたいのは音楽やアウトドアじゃないと感じる。
どちらかといえば、癒しや人肌恋しさを埋めることの方が大事なんじゃないかと思い、模索することにした。出会い系アプリ、マッチングの婚活アプリ、色々あるようだが彼女や妻がほしいわけではないため、何が良いか悩みに悩む。
土曜の夕方、得意先を出た際にたまたま周辺が新宿歌舞伎町だったので、飲食店に向かおうとしていた。そして歩いていたところ、キャッチに声をかけられた。
「セクキャバはどうですか?」との声かけはうっとうしいもので、スルーしていたら「ガールズバーもいいところありますよ」と重ねて言っていた。ガールズバー?それは一体何だろう?と思ったが、その日は食事だけ済ませて家に帰った。
結局、帰ってからも頭をよぎったので調べてみたが、内容は何となくわかった。キャバクラのように1対1じゃなくてカウンターで飲み、カウンター内には女の子が居る。
ここまでは把握できたが、スナックと何が違うのだろう?そう思うと、自分はいま女の子が接客をするナイトジャンルの店に行きたい欲求が強いことを知る。
翌週、運良く2連休になったため、リターンズ・新宿ということで再度出向く。キャッチを通じ誘導されてもぼったくり被害に遭いそうな懸念があったため、ネットで目星をつけた店舗へ行くことにする。
俺が選んだのは、英国風レトロかつ雰囲気が落ち着いたガールズバー。扉を開けるとブラウン調で照明をやや落とした感じで、空間の小洒落度がなかなか俺好み。
15席くらいのカウンターで、女の子が席に案内してくれてゆったりと腰を下ろした。
「今日はご来店ありがとうございます。どうやってうちの店をご存知になったのですか?」と聞かれたので「いや、ネットで見て雰囲気良さげだったからね。他の店はチャイナ服とかバニーガールとか制服のお店ばかりだったから」と率直に告げた。
俺についてくれた女の子は、ピックアップガールにもなっていた美人さん。
「ウチの店は、居心地が良いって多くのお客さんが言ってくれるの」と、すぐタメ口にはなったものの、愛嬌がものすごくいい。
また、セクシーがテーマのガールズバーでもあったようで、彼女をはじめ周囲を見渡しても胸元がややはだけていて見ているだけで得した気分だ。だからその思いを口に出し「いやあ、目の保養になる、瞳が幸せって言っているよ」とジョークも飛ばす俺。
「何言っているの~(笑)でもお兄さん面白い」と言われ「こんな言葉、仕事の日にはまず出てこないよ」と返した。
すると、ビールグラスが空になっていたのを見てすぐにおかわりを用意してくれる気配りの良さ。そして俺の愚痴をしっかりと聞いてくれた。
想定では、女の子が派手な格好でカウンターに居て、ドリンクをおねだりされるばかりだと思っていた。
事前はネガティブにとらえていた印象が、好印象へ変わっていくのを確信する。そのほか気に入った点としては、女の子が営業を仕掛けて来ないところだろうか。
ガールズドリンクは1000円だけど、ドリンクをねだられることがないのが特に良い。そうなると逆におごりたくなるので、彼女のほか隣にいた黒髪のお姉さんにもおごってあげた。
羽振りが良いと言われたけど、金を使う余力もないくらい疲れていたからな。なお、カラオケもありノリノリな客が歌っていたけど、今回は聞く側に徹しながら女の子とのトークをとことん楽しんだ。
今日は確認がてらで来たこともあったから延長はしなかったけど、有意義な60分だった。帰る前に「日記のほうも更新しているから、ぜひ見てね」という言葉を受け「もちろん」と返して店を後にした。
帰り道、仕事の疲れが取れている気がして、翌日起きた時にも疲労があまりなかったことを感じる。ストレスが解消されたんだと確信し、この店に、また来ると決めた。
ついでながら、1人で行っても疎外感がないのもある意味収穫だった。ガールズバーは、スナックが進化したとすら思える、俺のヒーリングスポットだ。