コンプレックス解消の女神、僕はガールズバーで変われた
H.N/粛清します
嫉妬深くて友人も少ない僕は、学生時代からずっと外見上の欠点に悩まされていました。僕は身長が180cmあるにもかかわらず、豚鼻で容姿が微妙……。更にニキビが悪化していて肌がボコボコに見えてしまっているのです。例えるなら、格闘技で顔を負傷したかのような凸凹な顔つき。後ろ姿はスラッとして格好いいと言われても、顔面自体を褒められなければ意味がありません。
元カノは149cmでミニマムな人だったけど、一緒に歩く時はそわそわしていて、ブサイクな自分を内心で馬鹿にしているかのようでした。そんな劣等感からケンカも尽きず、結局は別れる始末。もう人間不信になってしまいそうだと思いながら、僕はひたすらフォーク乗りとしての仕事を日々こなしていました。
仕事は工場内と、出入り口付近のエリアを動くほどで、会話は端的で短い仕事の話のみ。そうして1年が過ぎ去り21歳になった僕は、長期にわたる孤独感から寂しさを覚えるようになりました。
恋は苦い、でも女の子とは関わりたい。そんな感情に華を添えてくれ、彩りを与えてくれる場はどこがいいのか考え抜きました。
SNSとかのコミュニティに属すると、どうやらオフ会というものの開催で、女の子と交わるチャンスはある模様。でも複数で大勢すぎるし、もっと密接にと考え、さらに試行錯誤を重ねます。
結果として第一候補になったのは、ガールズバー。高級なボトルをせがまれることがなくて、リーズナブルな料金で女の子と話せるというから興味も湧くというものです。
ドキドキと緊張が走るなか、目星を付けたお店の目の前まで向かいました。店内が一切見えず、ドアマン?ボーイさん?というのも立っていなかったので、恐る恐る中へとイン。
「いらっしゃいませ~」の声がかかるのは当然として、可愛い子2人が一斉に僕へ視線を向けます。「ひっ、1人だけど大丈夫ですかね?」呂律が回っていないだろうというシャイ剥き出しな僕に、「もちろん、オールOK!」と若さモリモリな応対で、肩の荷が下りる気持ちです。カウンターの椅子に腰を下ろしたのだけど、まあオシャレなこと。
「ガールズバーは初めてですか?」の問いに「す、スナックなら親父に連れて行ってもらいましたが」と回答する僕。「敬語なんて使わないで、タメでいいですよ。一杯いきます?」とお酒のご案内。ビール込みの飲み放題なので、遠慮なく喉を潤し、緊張をほぐすために飲ませてもらいました。
対面カウンターに入っているSさんは僕と同い年。「最初は2人で男性のお客さんは来るものかな。でも、お兄さんは1人で来るなんて、度胸があるよ」と自信を付けさせてくれる言葉をもらえました。
和やかな雰囲気に包まれた時、僕は醜形恐怖のコンプレックスを打ち明けたくなり、思いのままに話します。すると「お兄さん、ブサイクじゃないし高身長でモデルさんみたいだよ」という意外な回答。
でも劣等感の塊を、何故か逆なでされた気持ちになってしまい「俺を馬鹿にしているんだろう!」と声を荒げ大失態。「そんなつもりじゃないよお」とSさんが言い、ふと我に返った僕は思い切り平謝り。「ドリンクをどうか飲んで下さい」と、キャスト用のドリンクを入れてあげて、何とか場を持ち直します。しかし盛り上がる会話がなく、その日はお店を後にしました。
そこから僕は、どうしてもコンプレックスを解消しなければならないと、1つの決断を下します。豚鼻というか鼻がとにかく低かったので、思い切って整形をしたのです。結論はやって大満足で、ルックスは見違えるようにアップした気がします。
ネガティブな感情が消えた時、僕はSさんが忘れられなくて、いや汚名返上をしたいという感情でしょうか。再度そのガールズバーを訪れたのです。
「え?え?二ヶ月前くらいに来たお兄さん?」「そうだよ、思い切って整形しちゃった。けど、お姉さんがきっかけをくれたんだよ」と正直に告げ、今回はずっと和やかなムード。
他のキャストさんにも迷惑をかけたと思ったので、出勤しているお姉さんがた3名全員にドリンクを入れてあげました。何千円するものでもなく、1杯が1,000円というレベルなので、懐も痛くない。
そうしてお店を出る間際、「うちの女の子、ドリンクオーダーが少なくて凹んでいたから、お兄さんに感謝していたよ」と感謝の言葉までもらえました。
寛容さに溢れ、値段も安く、可愛い子が沢山いる。僕はおじさんになるまで、これからもガールズバーに通い続けたいと思います。