初老ですが初ガールズバーは楽しめました
H.N/末吉
人生ももう折り返し地点。あっという間に50を過ぎ、自分自身の生活にも若干のゆとりができると、やはり少しの変化や刺激が欲しくなるものですね。
会社の部下と飲み屋に行くことはたびたびありますが、視力が衰え白髪が多くなっても、やはり女性に対する興味、関心はなくならないもの。
さて、先日のことです。悶々とした毎日を送る中、中学の同級生に居酒屋で遭遇。懐かしい思い出話に浸りながら、お互い歳をとったなと笑い合いお酌を重ねると、突然彼はこう切り出したんです。
「お前はガールズバー行ったことある?意外と面白くて元気がもらえるんだ」と唐突に言うではありませんか。正直ガールズバーなんてよくわかりませんし、キャバクラと同じ類としか考えておりませんでしたが、どうやら全く異なるようです。
「はは、ガールズなんたらなんて、若い男が遊ぶとこだろ?」と言ったんですが、ちょくちょく通っているという彼の言葉がどこかでずっとひっかかっていたんです。
50過ぎのオヤジがガールズバーでどう酔えばいいのか?しかし、日々の乾いた生活に潤いを与えるにはちょうどいいタイミング、選択肢なのかもしれないと思い直し、仕事帰りに某ガールズバーへ行くことにしました。
場所柄多くの外国人観光客も多い繁華街、雑踏に飲まれ吸い込まれるようにある雑居ビルの階段を上ると見えてくる重たい扉。〇〇ガールズバーというネオンサインが、ポッと遥か昔に過ごした青春の日々を蘇えらせます。
大きな深呼吸をして扉を開けると、カウンター越しから元気な声が響いてきました。冴えない会社のお局ばかりにもまれていると、若くてはつらつな女性の笑顔がとても新鮮に感じるものですね。
いやはや、場違いかもしれぬな……と思ったのもつかのま、20前後と思しき女性が接客をしてくれました。カウンター席での飲みといっても街角の飲み屋とは、どうやら雰囲気が全く違います。
恐る恐る席に腰を下ろすと、爽やかな笑顔で「初めてですか」と声をかけてくれましたよ。この年になると緊張する機会はめっきり少なくなったのですが、なぜか強張ってしまうものですね。
「そんなとこかな、はは」と、情けない返信しかできなかったです。
そのガールズバーは意外にアルコールメニューとつまみが充実しており、とりあえず赤ワインを注文することに。
声をかけてくれた子にオーダーすると、その子はどうやらりさこというらしい。もちろんりさこへの飲み物もおごり、しばらく会話を楽しむことにしたのです。
年齢差が……と気になるところですが、この子は生粋の話上手といいますか、引き出しを沢山持っているようでとにかく飽きないんです。仕事やキャリアについて、趣味のクラシック音楽に大昔の片思い、そしてきっかけを作ってくれた旧友のことなど、気づけば笑顔で話していたんですよ。
接待はできない、そして他のお客さんの接客もあるということで席を外すことはありましたが、彼女と話していると安心するんですね。りさこが相槌を打ってくれると、なぜか心が軽やかになるそんな錯覚すら覚えました。
普段から女性と話す機会にあまり恵まれていないからでしょうか、それともちょっとした恋心みたいな類なのか……。それはわかりませんが、グラスの氷が溶ける頃には人とのコミュニケーションの心地よさ、そんな大切なものを再認識させてくれたような気がします。
店も混んできたので1時間を待たずに退店しましたが、りさこ並びに他の女性スタッフの接客、教育も問題なく、そのコスパの良さにも驚きました。
ガールズバーなんてと思っていた自分が恥ずかしい限り。職業や年齢関係なく楽しめる場ができる、これは私にとって大きな収穫。夜風にあたりながら酔いを醒まし、なんだか足取りも少し軽やかになった気がしました。
そうそう、今も月に数回のペースで件のガールズバーに通っているんです。聞くと色んなタイプのお店があるようですが、私は運がよかった。自分にピッタリのお店を初回で見つけられたのだから。流石に客層のメインが大学生というようなガールズバーでは、落ち着いて飲めませんからね。
りさこと話していると、自分の中に情熱みたいなものが生まれているような、そんな錯覚に陥りますが、恋愛を求めているわけではないので、慎みながら私なりの遊び場として通えればと思っています。(ただ、りさこの不思議な魅力にハマってしまわないか、そんな少しの恐怖心があるのも事実ですが……)
単純ですが人生なかなか捨てたもんじゃない、最近そんな風にも感じていますよ。縁って不思議ですね。